Prince「ギターマガジン 7月号」「ベースマガジン 7月号」、「JAPAN JAZZ vol.71」
いやあ…
Prince特集の『現代思想臨時増刊号』が素晴らしかったので、その書評的なものを書きたくて始めたBowieとPrinceの追悼特集本の再読。なかなかたどり着かない〜〜〜
なぜこう1つのことをしたいだけなのに、マイナス地点から開始するのか…
「自分で順に全体を把握したい」性格。
絶対、塾とかで「教えられる」のは向いてなかったと想像。行ったことナイからわからんけど…
はい。ようやう「表紙&特集」での最後、リットーミュージックのPrinceの方です。
まずはこちら。
Guitar magazine (ギター・マガジン) 2016年 7月号 [雑誌]
- 作者: ギター・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2016/06/13
- メディア: 雑誌
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特集「殿下のギター愛」は堂々の26ページ!!!
ちなみに前回(2010年9月号)の特集はこちらで読めるようになっています。
「巻頭言」西寺郷太
あらゆる楽器を操るものの、「ギター・ヒーローとしての佇まいの、ステージさばきが極めて美しかった」ため、プリンスといえばギター。
「#1: HOHNER HG-490 "Mad Cat"」
Princeが最も愛したとして知られる、日本のブランド、H.S.アンダーソン(1974年設立)のギター。
設計/開発者の椎野秀聰のインタビュー。最初は「あんな気持ち悪いヤツが使っても誰も買わないだろう、と思って」いたそう。
「#2: Cloud Guitar」
映画『パープルレイン』の中に出てくるギター。
「#3: Symbol Guitar」
'94年の改名の前年に制作して使い出した。
制作、リペアを担当した柚山哲也のインタビュー。
「#4: GUS GUITARS G1"Purple Special"」
制作者のサイモン・ファーマーのインタビュー。Prince最後のギター。
「プリンスが愛したギターたち」川上啓之
メイン使用以外のギターを紹介。およびアンプ、エフェクターも。
「Prince's Sound Style〜プリンスの録音環境を斬る!!」中村公輔
ペイズリーパークスタジオの機材紹介。
デヴィッド・Zの役割。APIのミキサー卓、リンドラム、リズムマシン、デジタル・リバーブ、ライン録音。
「SUGIZOインタビュー」
ギター的名盤は『Rainbow Children』『N.E.W.S.』『Parade』
「Playing Analysis of Prince』安東滋
カッティング、バッキング、コンビ、コード・ボイシング、ソロ…
この特集号はほんと超保存版!!!
次に
BASS MAGAZINE (ベース マガジン) 2016年 7月号 [雑誌]
- 作者: ベース・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2016/06/18
- メディア: 雑誌
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特集は12ページ。
「"ベースは僕にとっては「B-A-S-E」であって「BASS」じゃない。「BASS」は魚さ(本誌2000年2月号より)”」と語ったPrinceの低音を探る。
「時代を作った"天才"の歩み」佐藤英輔
バイオグラフィーと、「常軌を逸した音楽的な幅の広さ」「希有のボーカリスト」「常軌を逸した多作家であり、音楽の虫」「感性の鋭さやクレヴァーさから来る、イメージ作りのうまさ」「バカヤロー精神、あまのじゃく志向に則った、胸のすく行動」「女好き」といトピックを経て、プリンスとベースについて。「ベースを意識的に入れていない曲」は「低音についての独自の感覚、見解を持っていたことの証左」。ラリー・グラハムへの信奉。
「ベーシストに聴いてほしいプリンス」國崎晋
『戦慄の貴公子』:シンセベースのぶっきらぼうなまでの野蛮かつ斬新さ
『パープルレイン』:「弦ベース」や「シンベ」はないが、「キックベース」は存在。リズムマシンによって作り上げられた低域の音階は存在。「ロック/ポップスでベースに求められているのは、低い音域と高い音圧そして反復だということが、ベースという楽器を使わずして証明されてしまっている。」
『パレード』:「KISS」はベースはないが、「シンセのシーケンスがベース弦の倍音成分のような役割を果たし、実際には存在しないベース・ラインが多くのリスナーには聴こえているはずだ」。
『サイン・オブ・ザ・タイムズ』:シンベ、弦ベースとバラエティ豊か
『Rave Un2 the Year 2000』(DVD):ラリーのプレイを。
『レインボウ・チルドレン』:〃
「スペシャルインタビュー:ロンダ・スミス」
NPGのベーシスト。身近で体感してきたPrinceのベースプレイ。典型的なジャズ・ベースサウンドがPrinceの好み。
「インタビュー:日向秀和」
独自のノリと変なタイミングの面白さ。
「Playing Analysis of PRINCE」前田"JIMMY"久史
「ソー・ブルー」「アイム・ユアーズ」「セクシー・ダンサー」「アイ・フィール・フォー・ユー」「ヘッド」「パーティーアップ」「レッツ・ワーク」「レディ・キャブ・ドライヴァー」「アルファベット・ストリート」「2・ニグス・ユナイテッド・4・ウェスト・コンプトン」「Cloreen Bacon Skin」「Last Heart」「ベイビー・ノウズ」「ミュージコロジー」「タイム」
この特集号も鋭く、深く面白かった。
Drums Magazineでは特に特集はなかったようだけど、もしあったなら欲しかった。
楽器から見て行くPrinceは、もっとも全うなアプローチなんだろう。
ついでに!
4ページのみながら、「帝王(マイルス)と殿下(プリンス)の"if"」上原基章
マイルスとプリンスが「合わせ鏡」「カインとアベル」的な存在であること。
共演した音源と、実現しなかった共演について。
ここまで!
次からは特別特集号。
早いこと現代思想へ!!!
BOWIE「Guitar Magazine 3月号」、「Rhythm & Drums Magazine 4月号」
今日はリットーミュージック。
表紙になったのはGuitarのPrinceのみですが、それぞれ特集が。
まずこちら。
Guitar magazine (ギター・マガジン) 2016年 3月号 [雑誌]
- 作者: ギター・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2016/02/13
- メディア: 雑誌
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Bowie特集は6ページ+「Stay」の楽譜8ページ。
知らなかったエピソードが「日本語訳」で幾つか。
「あいつがイグアナちゃん(イギー)なら俺はアリゲーター」
ドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』の中でフリークショーの女主人が夜な夜な歌う「火星の生活」
『ダイアモンドの犬』でのボウイのギターのアグレッシブさ
TAKUYA 取材・撮影:田坂圭
ソングライターとしてコード進行も見事。日本のポップスとは方法論がまったく違う。
志磨遼平(ドレスコーズ)×越川和磨(THE STARBEMS)
"アートワークから何から全部、自分が死ぬことで完成するアルバム"
続いてドラムマガジン。表紙&特集はマーク・ジュリアナ。
Rhythm & Drums magazine (リズム アンド ドラムマガジン) 2016年 4月号 [雑誌]
- 作者: リズム&ドラム・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 雑誌
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ボウイ特集は8ページ。
「HISTORY〜デヴィッド・ボウイを支えたドラマーたちの変遷」Shinichi Takeuchi
1960〜1970年代:ミック・ウッドマンジー、エインズレー・ダンバー、トニー・ニューマン、アンディー・ニューマーク、デニス・デイヴィ
1980年代:トニー・トンプソン、オマー・ハキム、ハント・セールス
1990〜2010年代:プージー・ベル、ジョーイ・バロン、スターリング・キャンベル、ザッカリー・アルフォード、マーク・ジュリアナ
…デニス以降、ほとんどが黒人ドラマー。
「Interview 1: Mick Woodmansey」(2001年3月号から抜粋)
「曲に合うように叩くことは簡単だ。でも、前に聴いたことがあるような演奏をしたくない。」
「Interview 2: Omar Hakim」
「スタジオに入ったらみんなその場で曲を頭に入れて、全部耳で聴いて、一番グルーヴしてカッコいいものが見つかるまで、みんなでひたすらジャムったんだ!」
「Interview 3: Zachary Alford」(2013年7月号から抜粋)
「デモと違うビートを叩いてたんだ。そしたらデヴィッドが"それ、いいね!”って。(…)いろんなことを試して、気に入ると"OK、これをやってみよう!"って。
「Interview 4: Sterling Campbell」
「新しいものに対応する方法を見つけた気がする」
「PLAYING ANALYSIS〜デヴィッド・ボウイのリズム/ドラム・トラックをひも解く〜」Hiroshi Matsuo
「Life On Mars?」「Five Years」「Let's Dance」「I Keep Forgettin’」「Dirty Boys」「Where Are We Now?」「Jamp They Say」「New Killer Star」
「Drummer's File〜ボウイと共演した打楽器奏者たち」
というわけでやっぱりPrinceの方は後日。
先日、Neu!やHarmoniaのMichael Rotherのライブへ行き、ドラムはHans Lampeだったのだけど、ギターもドラムもクールに熱くて最高!!と思って楽しんだところなので、あまり語られないボウイの音楽の「演奏」に注目するこれらの楽器雑誌の特集は他の一般的な雑誌よりも実はすごく面白い。
Prince「ミュージックマガジン 6月号」
今朝(日本の)、BBCラジオでBowieのPromコンサートを生放送していました。
たぶんまたそのうちアーカイヴが聞けるようになるかと。
昨日読み返したレココレのサエキさんの記事の中で強調されていたBowieのソングライティングの面白さが、こういう色んな人がBowieの曲を演奏する場では特に楽しめる。
John Caleの「Valentine's Day」とか、とても良かった。
というわけで、昨日、ほんとは一緒に書こうとしていたMusic Magazineの方、行きます。
Princeの訃報が日本に伝わったのが4/22なので、急遽特集を変更して 28日後に発売。
Prince特集は47ページ。
「緊急追悼対談 安齋肇×湯浅学 プリンスに較べられる人はプリンスしかいない」
プリンスへの大ツッコミ大会。笑
特集アタマがコレかい!!と、これ最初に読んだ時も、今も、やっぱりプリンスが死ぬなんて全然ピンとこないので、笑いまくって読んだのでした。
そして大事な指摘がたくさん。「曲のアタマがパシッ」と入って、「フェードアウトが少ない」から、曲を繋ぎやすい。すぐ何の曲か分かる。「本人も間違えないように出来てる」って、めっちゃ核心。
「人種もジャンルも越えて深く愛されていたことがよく分かる、哀悼の声の数々〜急死前後のアメリカでの報道と、各界の人々の反応」堂本かおる
4月7日からの動向。
アメリカでも様々な人々が悼む中、比較的すくなかったのが、若いラッパー、10〜20代の黒人、というのがPrinceと縁の薄かった層と推測。
「プリンス・ヒストリー① 謎めいた天才の衝撃〜ロックとファンクの狭間からの挑発、そして成功」小出斉
『Chaos and 〜』まで。
「オリジナル・アルバム・ガイド①」安斎明定、大谷隆之、高橋健太郎、二木信、安田謙一、和久井光司、渡辺健吾、渡辺亨
『For You』(1978)〜『Crystal Ball』(1998)
「プリンス・ヒストリー② 果敢で濃密な時間〜過剰なカリスマ性をゆっくりと脱ぎ捨てて」出田圭
『Rave〜』以降。
「オリジナル・アルバム・ガイド②」出田圭、印南敦史、長谷川町蔵、松竹剛、宮子和眞
『Rave Un2 The Joy Fantastic』(1999)〜『HITnRUN Phase Two』(2015)
「編集盤、別名義など、そのほかのアルバム」高橋修
「80年代、映画という新世界で殿下は奮闘し続けた〜プリンスが制作した4本の映画作品」大森さわこ
「プリンスが手がけ、見出し、楽曲提供したアーティスト」安斎明定
「プリンスがその後に与えた多大な影響〜密室打ち込みファンクから自由な性表現まで時代、ジャンルを超えて存在するプリンス・チルドレン」長谷川町蔵
「日本に我らが岡村靖幸がいるように、それぞれの国に〈ドメスティック化されたプリンス〉がいるはずだ」けれど、アメリカの黒人限定で紹介。
テレンス・トレント・ダービー、ミゲル、ディアンジェロ、アウトキャスト…
以上が特集。
以下は連載。
「ALBUM PICKUP」
『ヒット・アンド・ラン・フェーズ・ツー』宮子和眞
プリンスが肩の力を抜いて投げるボールのキレの良さ=歌謡性。
「編集後記」高橋修
Princeといえば「今野雄二さんと、中村とうよう」と結びついたイメージ。
「4月28日に見た岡村幸公演で、彼がアンコールで「スノウ・イン・エイプリル」を弾き語りで歌ったのには泣けました。」
BOWIE「レコードコレクターズ 3月号」、「ミュージックマガジン 3月号」
今日はミュージックマガジン社が出している2つの看板雑誌それぞれが表紙&特集でとりあげたBowieとPrince。
もともと「レコードコレクターズ」は「ミュージックマガジン」の別冊として出たので、棲み分けがはっきりしているようで、80年代からBowieはレココレ、PrinceはMMで、という感じだったかと。
追悼号もしかり。
まずはレコード・コレクターズ3月号 (2016年2月15日)
訃報が日本に伝わったのが1月11日なので、それから36日後に発売。
表紙が凝ってて、★が隠れてます。
75ページの大特集!
「最後の伝説の扉を自らの手でみごとに閉じた、"地球に落ちて来た男"」大鷹俊一
「ロック界が初めて出会う、自己の死と対峙し、作品化したアーティスト」として、ボウイの死という「ニュース」の経緯、およびボウイ史概論。
「デイヴィッド・ボウイ"私の一枚"」
赤尾美香『LET'S DANCE』:18歳で36歳のボウイに恋をしていた。
ECD『CHANGESONEBOWIE』:77年2月の「地球に落ちて来た男」公開がファンになって以来最初の最大のイベント。
市川紗椰『hours...』:ジギーではまった小6時に初めて聞いた時は嫌いだった。
奥田英朗『ALADDIN SANE』:ロック・レジェンドらしくドラッグでも飛行機事故でも自殺でもなく、ガンという普通の死に方だったいう衝撃。
岸野雄一『YOUNG AMERICANS』:黒人音楽への冷徹な対象化とぬぐいされない愛着
志摩遼平『ZIGGY STARDUST』:このボウイの"やりくち"に心酔し、なぞってきた。
高橋靖子『HEROES』:革ジャンエピソード
土屋昌巳『ZIGGY STARDUST』:リアルタイムのあのとてつもない衝撃
ピーター・バラカン『戦場のメリークリスマス』:声が好みじゃない。映画のロケの思い出。
ROLLY『DAVID BOWIE(SPACE ODDITY)』:有近真澄氏の見事な日本語詩。
「『変身』と表裏一体をなすリアルな音楽的衝動」サエキけんぞう
この特集全体でもっとも面白かった記事。サエキさんの文体が冴え冴え。NHK FMで「今日は一日ボウイ三昧」が行われる際の司会はサエキさんでお願いします!
「『演じる』ことで始めたくせに、生命のすべてを映すことになった楽曲群」から10曲を再検証。
〈スペイス・オディティ〉:圧倒的なこの曲の個性は、マイナーとメジャーの混在により、「宇宙の暗く孤独な側面と、宇宙船に太陽が当たったような展望の瞬間を混在させていること」。
〈チェンジズ〉:華のあるメロディの魅力は生涯随一。
〈5年間〉:ジギーというアルバムの評価はこの曲野リズム構造のオリジナリティのせい。
〈ジーン・ジニー〉:グラムのギラギラさ。
〈ヤング・アメリカンズ〉:ボウイの歌唱という異能が結晶している。
〈ワルシャワの幻想〉:実験結果が失敗したらリリースしないという約束だったほどの実験作。
〈ヒーローズ〉:「ドロっとした狂気」と「骨太な黒人R&B的3リズム」、イーノ&フリップの混ざった破壊力。
〈レッツ・ダンス〉:「ここ一番のメロディ・センス」。
〈ハーツ・フィルシー・レッスン〉:「シーンと格闘する硬質な意志」。
〈★〉:全文素晴らしいです。(涙)
再掲インタビュー「ジギー・スターダストはロスにウッチャッてきたよ」インタヴュ—ワー:坂本龍一(1979年2月号)
なんと戦メリ以前のインタビュー!!貴重。
「デイヴィッド・ボウイ・ヒストリー」赤岩和美
「京都を愛した親日家としての素顔」岡田敏一
正伝寺を尋ね、CM撮影の経緯を紹介。
「David Bowie 1970s Memories」写真:鋤田正義
「遺作という意味を越え、吹っ切れた鮮やかさが残る意欲作」安田謙一
初めて全米1位を獲得したアルバム『★』の全曲解説。
『★』のLP+リトグラフ
「デイヴィッド・ボウイ・ディスコグラフィ〜オリジナル・アルバム」小野島大
「日本盤7インチ・シングル・ギャラリー」常磐響
「デイヴィッド・ボウイ・ディスコグラフィ〜映像作品」吉村栄一
以上、盛りだくさんの特集。
同日発売の「ミュージックマガジン」も特集が読みたくて買っていたので、Bowie追悼記事も付いてきました。3月号(2月20日発売)。
4ページの追悼記事。
「追悼デヴィッド・ボウイ」志田歩
(いま気付いたけど、レココレは「デイヴィッド」で、MMは「デヴィッド」表記なんだ)
『★』の見事さ、発売日に発表された写真の明るいスター性、「実は…」を知った時に誰もが容易に感じとれた彼の闘いの過酷さと雄々しさ。
「特集●新世代ジャズ・ドラマー」
『★』が如何に「新しい」音楽だったかを立証するためにも、この特集がこのタイミングで出た意味は大きかった。
というわけで、ホントはMMのプリンスも書こうとしてたのですが、予想以上にレココレのボウイ特集がボリュームあって、無理です!
また次回。
それにしても半年経って、だいぶあれかな、と思って始めたこの「追悼特集メモ」ですが、どうにもこうにもBowieのことに関しては今もすぐ涙が出てしまう。
BOWIE 「SFマガジン 4月号」
B vs P ということで、一応、同じ出版社の出版物で比較しようとしているのですが、今回は比較できない系。
疎い私には意外だった雑誌で表紙&特集を組まれたBOWIE。
SFマガジン4月号。
ボウイ特集は計24ページ。
SFにはまっっったく明るくない私ですが、先日「生ジギーライブ」を観たことがあるというロングランファンの方に、Bowieを知ったきっかけをうかがってみたところ、高校生の頃、SFファンだった友人から「金星人にそっくりの人がいる!」と教えられ「ホントだ!!!」と興奮した、というエピソードを聞いたので、「なるほど」とやっと思いました。そしてこの特集が、存外良かったです。
「
「巻頭言」丸屋九兵衛
すいません、存じ上げず、すっかりSF界の方かと思っていたら、bmrの方でした!!
なるほど!!!SFファンへの細かな目配せの効いたボウイ概論。
「シン・ホワイト・デューク やせっぽちの青白き公爵の帰還」ニール・ゲイマン、小川隆訳
メイン記事はこの短編の翻訳。ゲイマン氏というのはアメコミ界のスター原作者(イギリス人)らしいです。へ〜〜。
そういや「シン・ホワイト・デューク」って何者?って考えたことなかった…と反省。
「仄暗い宇宙のロックスター」難波弘之
音楽家でありSF作家だそうです。すいません、疎くて…。
「『ジギー・スターダスト』を初めて聞いた学生の頃、僕はサイケやプログレを聴いていたのだが、まるで宇宙人の音楽のような、斬新で不思議なボウイの曲やサウンドを聴いて、正直、〈ああ、これで僕の聴いている音楽は古くなるんだろうな〉と思った。」とあるのだけれど、これがすごく意外な感想で新鮮。もちろん21世紀になって初めて聞いた私の耳にも新鮮だと感じたのだけど、耳障りは確実に「古い音」だったので。
「永劫の旅人ジギー」巽 孝之
BowieとSFとの相互関係。そしてイエスのリック・ウェイクマンが「Space Oddity」でメロトロンで参加しているという話。(彼は追悼で「Life On Mars?」をBBCラジオで披露。)
Rick Wakeman's Tribute To David Bowie - Life On Mars
「新たなる音楽遺伝子の誕生 ー『★』解題」吉田隆一
渋さ知らズなどにも参加していた(る?)サックス奏者の吉田氏。これは短くも的確な『★』評!!
「かつてボリス・ヴィアンは友人に〈SFはすごいぞ!今や月にどのようにして行くかではなく、行って何をするかが問題なんだ!〉と語ったと伝えられますが、『★』はまさしく〈ジャズミュージシャンを使うことではなく、彼らを使って何をするか〉という課題に向き合った音楽」と定義し、「ジャズ」という語が2つの意味で使用されている現状を解説。すなわち「記号としてのジャズ」と「従来の因習に囚われない音楽」という姿勢を表す言葉。『★』にはその両方がある、ということ。
この2ページにまとめられた明解さを読むだけでも、この雑誌、買って良かった。
ということで、5作の解題。
『スペイス・オディティ』:『2001年宇宙の旅』が下敷きになっているが、むしろブラッドベリの短編『万華鏡』の影響があるのでは。
『世界を売った男』:「Metal Gear Solid V: The Phantom Pain」や「MGS」という小島秀夫氏作のゲームに影響を与えた。
『ジギー・スターダスト』:色々な影響を与えているが、ゲームでは糸井重里の「MOTHER」など。
『ダイアモンドの犬』:本作から影響されたのが、アレステア・レナルズの『ダイアモンドの犬』という中編。
『地球に落ちて来た男』:絶品と絶賛(!)。「この映画は、監督のものであると同時にボウイ自身の作品でもあると断言していいと思う。」
余談。
今日は映画『エイミー』を観て来たのだけど、その中でトニー・ベネットが「ジャズシンガー」であることを自負するエイミー・ワインハウスに、ジャズシンガーは5万人の前で歌うもんじゃない、というようなことを語り、エイミー自身も少人数のジャズクラブでのライブを最も楽しんでいたことが紹介される。
それまでロックスターを演じてきたボウイが、5万人の前でも数十人の前でもライブの出来なくなった後、自分の音楽表現に「ジャズ」を使ったことを思い出した。
Prince「rockin' on 7月号」
先日、某書店で見つけたDM。
「あ!Valentine's Day!!」と、すぐ手にとり、日時を確認。
今日、行って来ました。
山本真也さんのBlackstar展。
1月以降に描かれたものばかり、とのことだけど、たくさんの作品。
ほとんどは2013年以降のBowie。
2003年までには見られなかったような、表情が多い。
強い。
Bowieってそういえば「泣き顔」や泣いてるところを見たことも想像したこともないな(Princeはめっちゃあるけど)、と思っていたけれど、この強い眼差しのボウイを見つめていると、「泣く」ような最大振り幅の感情の一歩手前なのではないか、という緊張感を感じてグッときた。
1つだけ、「あれ?こんなボウイあったかな〜」という表情のがあったのだけど、帰ってから、ああ、「The Stars(Are Out Tonight)」のビデオの食卓のシーンだ、と思い出す。ビデオの印象より、絵にはもっとhelplessな空気があったので、なかなか気付かなかった。
PaintingとDrawingの間で迷っていた、とご本人談だったけれど、Drawingにあたる「線」が蠢いていて、それが眼差しの確固たる強さ、固さに対して、「動」を感じさせたところが良かったです。ちょっとジャコメッティの絵画を思い出した。
さてさて。
昨日あんだけPrinceを表紙にしなかったロッキンオン、反省しろ!!みたいに書いていたんですが、さっき部屋を漁っていたら、あっっっ!!あるやん!!と。
すいません、私、Prince追悼号、ちゃんと買ってました…
立ち読みだけしたのかと思ってたら、ちゃんと……
というわけで、いきます。
「ロッキングオン7月号(6月1日発売)」
Prince特集は26ページで(ボウイは48ページ)、半分以上は過去インタビュー記事。
「巻頭言」高見展
ブラック・ミュージックからポップへ斬り込んだ革新者であった。
インディーとしての活動。普遍的な他者との関係性の追求。
「PRINCE DOCUMENTARY 1991」取材・文=山崎洋一郎
1991年のペイズリー・パーク・スタジオ潜入期。
例の大人用と子ども用の間の「どちらでもない微妙な高さの便器」報告。
リハ見学でPrinceの椅子に座ってしまう。
ステージを降りると「情けない魅力のない声」、というギャップ。いかがわしい匂い。
「PRINCE INTERVIEW 1996」インタビュー=高見展
11月1日、都内某ホテルにて蛍光グリーンの服に黒いスカーフのƬ̵̬̊
『Emancipation』についてのインタビュー。録音は禁止。
質問「あなたが最も大きな影響を受けたロック・アーティストとして、ジョニ・ミッチェル、ブライアン・イーノ、レッド・ツェッペリンの三つが上げられていたのを読んだ覚えがあるんですが、これは本当ですか?」
Ƭ̵̬̊ 「そう言われても、そもそも僕はブライアン・イーノなんてほとんど聴いたことさえないんだけどな。ブライアン・イーノねぇ…(笑)」
この中で一番グッときたのは最後のこの部分です。
「時間切れとなり、スタッフに促されて退室する時、僕は挨拶のつもりで振り返って軽く微笑んだ。すると、Ƭ̵̬̊は同じように微笑み返してくれた。それで今度は僕が小さく手を振ると、Ƭ̵̬̊もそうしてくれた。」
「PRINCE INTERVIEW 1999」インタビュー=中村明美、質問作成=高見展
ラリー・グラハムに導かれているという話。
『Rave Un2 The Joy Fantastic』の話。
「PRINCE FOREVER」語り手=渋谷陽一
やはり特筆すべきことは特に…(笑)
「PRINCE EPOSODE」対談:山崎洋一郎×高見展
80年代のライブがとんでもなく凄かった話。アフターパーティーの話など。
「プリンスの遺した解放のメッセージ」大鷹俊一
なんだかBowieのと同じ感想になってしまうけれど、「教科書的」なPrince概論。
以上が特集。
以下、連載。
「NO MORE ポップコーン泥棒 第22回 追悼:プリンス映画、イッキ見マラソン。」内瀬戸久司
アワード形式、ということで、
ベスト(文句なし)作品賞:『パープル・レイン』
ベスト(それともワースト?)主演男優/監督賞:『アンダーザチェリームーン』
ちっとも続編じゃない続編賞『グラフィティ・ブリッジ』
ベスト・ヒーロー/悪役賞:『バットマン』
ベスト(&ラスト)主題歌賞『ハッピーフィート』
という感じでした。
なんだろう、この緊張感のなさ…。もちろんPrinceのエピソードはどれもキュートで有り難いけれど…
BOWIE 「rockin' on 2月号」「rockin' on 3月号」
今日はロッキンオン。
ほんとはPrinceも比較したかったけど、ロッキンオンはPrinceを表紙にしなかった!!!(怒)
80年代はあんなに礼賛しておきながら…
というわけで、買ってないので、『★』発売前の2月号と急遽追悼号となった3月号を。
80年代のシンプルな表紙に対し、最近の表紙は…
おそらく読者の高齢化に伴い、Bowieのような知った顔じゃない限り、最近のバンドが表紙だと「顔」だけじゃ誰か分からないから、文字を多くしてるんだろう、と推測しますが、どうでしょうか…
裏表紙は2号続けて『★』。
まず2月号(12月29日発売)。
表紙には「デヴィッド・ボウイ、帰還!」という文字。
メインはコールドプレイと、「美メロ」ロック50曲という特集。
「美メロ」の方では、9位に「Life On Mars?」が選ばれており、大鷹俊一が解説の頭に「まだたった一回聴いただけだが、ボウイの新作『★』、素晴らしかった。」と。
特集の方は8ページ。
「"We were born upside down" DAVID BOWIE 」対談:山崎洋一郎×高見展
ということで、「試聴会で『★』を1回聴いただけ」で8ページ語り合う(とくに資料はなし)という無謀企画。
攻め方が『Low』を彷彿とさせる、ということが強調されながら、全編、絶賛。
普段ロッキンオン買わないからワカランけど、こういうもんなの?
1回聴いただけで、この絶賛(上述の大鷹さんもしかり)、少々大げさ過ぎやしないかい…と思いつつ、年末にコレ読んだときは「なんだか分からないがとにかく凄いらしい」とワクワクしました。
それ以来、はじめて読み返したけれど、なるほど、本人の死を前提に聴かなければ、一聴して感じ取られた不安感、緊張感というのが「今」という時代に関わるものだと理解されていたのだな。Bowie自身の死を前提に聴かれるようになってしまったのは少しもったいない…気もしたりする。
そして最後は「夢のように素晴らしい」という結論で終わっていました。
巻末のDISC REVIEWにも『★』by 井上貴子。
「まさかこんな才気走った傑作とは夢にも思わなかった」と。笑
「聴いていると、宇宙からボウイに見守られているような奇妙な錯覚に陥る」というのは、まさに。そしてそれは錯覚ではなくなった。
続いて3月号(2月1日発売)。
rockin'on (ロッキング・オン) 2016年 03月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: ロッキング オン
- 発売日: 2016/02/01
- メディア: 雑誌
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48ページの大特集。半分以上は過去のインタビュー記事再録。
「巻頭言」山崎洋一郎
『★』だけでなく、これまでのどのアルバムも「ラスト・アルバム」のようだった。
「DAVID BOIWE THE LAST INTERVIEW 2003」インタビュー:中村明美
・『KID A』が好きでRadioheadのライヴに行ったら、ライヴの方が良かったということ。もうすぐTV ON THE RADIOを観に行く。
・『REALITY』について。
・「レコードを売ってお金を稼ぐ時代は終わって、ライヴこそが唯一の資金源になるはず」という予言(→Pと異なり、Bowie自身はまったくそうならなかったけれど)。
以下、インタビュー再録はいずれもありがたい。
「DAVID BOWIE INTERVIEW 2002」インタビュー:山崎洋一郎
・『Heathen』について
・『hours...』は作りたいという必然性で作ったものではなかった。
・911のイベントで「America」を歌ったことについて。
「DAVID BOWIE INTERVIEW 1997」インタビュー:井上貴子
・『Earthling』について
・「僕はこの男(表紙のプリンスを指差して)と同じ問題を抱えてるんだよ。つまり僕は時として曲を書き過ぎるんだ。」
・デヴィッド・キット氏が2週間前に亡くなったことについて
・50歳記念ライブについて
「DAVID BOWIE INTERVIEW 1978」インタビュー:渋谷陽一
短い質問集。
「デヴィッド・ボウイとは何か?『★』とは何か?」:語り手=渋谷陽一
特筆すべきことは特に…
「ボウイがNYで生んだ『魂の救済』の物語」:中村明美
ミュージカル『ラザルス』を上演していたNYCシアターはボウイの家から5分(車で?)の場所。ラザルスのあらすじ。
「果てなき変容の完結」大鷹俊一
教科書的なボウイ史。
「世代も国境も文化も越えた"異端者たちの守護神"ボウイ」児島由紀子
ロンドンでパンクな青春を送った筆者。『Low』は「当時のロンドン・パンク・シーンでも最重要作品の1枚」など、他ジャンルの愛好者だけでなく、世界中のアート、ファッション、マンガなどなどに影響を与えた存在であったということ。
「『レッツ・ダンス』と『ジギー・スターダスト』〜ボウイは孤独をどう描いたのか?」高見展
・「SUICIDE」は「自暴自棄」というニュアンス。
・ムーンライトというロマンスの象徴が「シリアス」であるということ。
「生も死も作品にした最初のロック・スター、デヴィッド・ボウイ」井上貴子
「人生を誰にも奪わせなかった」「ボウイらしい最期」。
以上が特集。
以下、連載。
「NO MORE ポップコーン泥棒 第18回 土曜のドライヴ・インで〜追憶のボウイ映画」内瀬戸久司
「思えば、ボウイが演じた役には、似たような役はひとつもなかった」ということで、『地球に落ちてきた男』『戦場のメリークリスマス』『ハンガー』『ラビリンス/魔王の迷宮』『バスキア』のボウイ映画「神5」について。
「コレポン通信 デヴィッドボウイと私〜音楽関係者が語るボウイへの想いと『★』制作秘話」中村明美
特集ではないこのコーナーの2ページが実は一番『★』の情報が多いというのは、この雑誌の特色をいかにも表している。
編集後記は3名ともボウイ話。
DISC REVIEWには、まだCDでは出ておらず配信のみという時期ながら、Princeの『HITnRUN phase2』が取り上げられ、まったくこれが遺作となるとはもちろん予想されていないので、相変わらず「これも良いけど、次作はもっと良いのをね!」ムード。
という2月号、3月号でした。
時期的に7月号がPrince表紙だな、って予想していたのに、まさかのレッチリでずっこけて、買ってません。
Bowieがなくなったときに、Princeファンの知人と、「Pがもし亡くなったとして、Bowieほど事件になるだろうか、首相のコメントなど出るのだろうか、雑誌は取り上げるだろうか…ちょっと無理かもね…」と話していたけれど、今となってみたら、同じか、むしろPrinceのほうがこれまで語られて来なかった分、新鮮な言葉がよりたくさん紡がれているのだけど、ロッキンオン、この時はさてはここまでになるとは予想していなかったでしょ…という気がするので猛省をお願いします。
過去インタビュー記事アーカイヴだけでよいので、今からでよいので、出してください。