bowie note

David Bowieをキーワードにあれこれたどってみるノート。

Can you hear me, major Tom ?

Brelからつながって、スタンリー・キューブリック

1968年11月、『2001年宇宙の旅』を見たBowieは、宇宙、宇宙の生命体、宇宙飛行士に興味を抱き、12月には『2001年宇宙の旅(Space Oddisey)』をもじったタイトルの『Space Oddity』を作曲。プロモーションビデオ番組で披露。


David Bowie- Space Oddity Original Video (1969 ...

 

この曲、いろんな録音があるけれど、この最初のver.が一番好き。壮大さという点では一歩足りないけれど、間奏の素朴なリコーダーソロの音が、他のどの楽器ソロよりもグッと来ます。

名曲誕生を感じたスタッフたちだったけれど、この曲の収録されたアルバムの発売は、1969年7月20日にアポロ11号が月面着陸する、という計画に合わせて7月11日まで延期された。BBCのこの報道のテーマ曲にまでなったものの、むしろ1961年に初めて宇宙へ行って、1968年3月に事故死したガガーリンのことの方が思い出される内容の歌詞。

『ゼロ・グラヴィティ』とはベクトルがおそらく逆。

ダンカン・ジョーンズの『月に囚われた男』のように、帰還する場所もないと分かった人間の永遠への道程。トム少佐は復路を忘れ、漂っていく。『2001年宇宙の旅』は新しい生命の誕生に繋がる円環を持った結末になっていたけれど。

 

 

拙訳、試みてみました。

元の詩→

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スペース・オディティ

words & music by David Bowie

 

地上管制よりトム少佐へ

地上管制よりトム少佐へ

プロテインを服用し、ヘルメットを着用せよ

(10) 地上管制より (9) トム少佐へ (8)

(7,6) カウントダウン開始 (5) エンジンオン (4)

(3,2) 発火確認せよ (1) それでは幸運を祈る (発射)

 

こちら地上管制よりトム少佐へ すばらしい 成功だ

新聞社たちは君が着てるシャツがどこのものだか知りたがってる

さあ、カプセルを離れるなら今だ

 

こちらトム少佐より地上管制へ ドアから出るところです

ホントに妙な具合に浮いています

今日の星はいつもとまったく違って見えます

私は世界のはるか上空でブリキ缶の中に座っています

地球は青く、私にできることは何もありません

 

100,000マイルを旅してきて、いま、とても静かな気持ちです

私の宇宙船は 行くべき道を知っています

妻に愛していると伝えてください

 

地上管制よりトム少佐へ

回線が切れている

何かおかしいようだ

トム少佐、聞こえるか?

聞こえるか?トム少佐

聞こえるか?トム少佐

聞こえるか?

 

私は月のはるか上空でブリキ缶の中に座っています

地球は青く、私にできることは何もありません

 

 

スペイス・オディティ(40周年記念エディション)

スペイス・オディティ(40周年記念エディション)

 

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勝手に色分けしてみましたが、緑はトム少佐のセリフ。

トム少佐、発射から宇宙空間までは順調だったのに、宇宙から青い地球を見て、静かに自分の無力感を確認してからどうも「おかしく(odd)」なっちゃったようで、地上の愛する家族に別れを告げて消えていきます。着ているシャツの銘柄を問われるようなスターになるには、帰還して任務を遂げてこそなのに…ということは、ガガーリンの例で世界中は知っていたでしょう。

 

宇宙の歌でもフォーク歌手スタイルでアコギってとこが、妙に新鮮に見える。


DAVID BOWIE - First TV appearance 1970 ...

 

あと、この歌はイタリア語verも存在し、Bowieは意味も分からずにイタリア語でレコーディングした後、イタリア語版はいっさい宇宙には関係のない、ありがちな男女のラブソングの歌詞がつけられていたことを知って愕然としたのだとか。

このイタリア語ver「Ragazzo solo, ragazza sola(タイトルも「孤独な少年、孤独な少女」という意)は、ベルナルド・ベルトリッチの映画『孤独な天使たち』(2013)に使われており、こちら、なかなかロマンチックなことになってます。

Io e Te (Bernardo Bertolucci) - Ragazzo solo, ragazza ...