bowie note

David Bowieをキーワードにあれこれたどってみるノート。

BOWIE 「SFマガジン 4月号」

B vs P ということで、一応、同じ出版社の出版物で比較しようとしているのですが、今回は比較できない系。

疎い私には意外だった雑誌で表紙&特集を組まれたBOWIE。

 

SFマガジン4月号。 

SFマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]

SFマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]

 

 ボウイ特集は計24ページ。

SFにはまっっったく明るくない私ですが、先日「生ジギーライブ」を観たことがあるというロングランファンの方に、Bowieを知ったきっかけをうかがってみたところ、高校生の頃、SFファンだった友人から「金星人にそっくりの人がいる!」と教えられ「ホントだ!!!」と興奮した、というエピソードを聞いたので、「なるほど」とやっと思いました。そしてこの特集が、存外良かったです。

f:id:ainocorrida:20160727232218j:plain

 

「巻頭言」丸屋九兵衛

すいません、存じ上げず、すっかりSF界の方かと思っていたら、bmrの方でした!!

なるほど!!!SFファンへの細かな目配せの効いたボウイ概論。

 

「シン・ホワイト・デューク やせっぽちの青白き公爵の帰還」ニール・ゲイマン小川隆

メイン記事はこの短編の翻訳。ゲイマン氏というのはアメコミ界のスター原作者(イギリス人)らしいです。へ〜〜。

そういや「シン・ホワイト・デューク」って何者?って考えたことなかった…と反省。

 

「仄暗い宇宙のロックスター」難波弘之

音楽家でありSF作家だそうです。すいません、疎くて…。

「『ジギー・スターダスト』を初めて聞いた学生の頃、僕はサイケやプログレを聴いていたのだが、まるで宇宙人の音楽のような、斬新で不思議なボウイの曲やサウンドを聴いて、正直、〈ああ、これで僕の聴いている音楽は古くなるんだろうな〉と思った。」とあるのだけれど、これがすごく意外な感想で新鮮。もちろん21世紀になって初めて聞いた私の耳にも新鮮だと感じたのだけど、耳障りは確実に「古い音」だったので。

 

「永劫の旅人ジギー」巽 孝之

BowieとSFとの相互関係。そしてイエスのリック・ウェイクマンが「Space Oddity」でメロトロンで参加しているという話。(彼は追悼で「Life On Mars?」をBBCラジオで披露。)


Rick Wakeman's Tribute To David Bowie - Life On Mars

 

「新たなる音楽遺伝子の誕生 ー『★』解題」吉田隆一

渋さ知らズなどにも参加していた(る?)サックス奏者の吉田氏。これは短くも的確な『★』評!!

「かつてボリス・ヴィアンは友人に〈SFはすごいぞ!今や月にどのようにして行くかではなく、行って何をするかが問題なんだ!〉と語ったと伝えられますが、『★』はまさしく〈ジャズミュージシャンを使うことではなく、彼らを使って何をするか〉という課題に向き合った音楽」と定義し、「ジャズ」という語が2つの意味で使用されている現状を解説。すなわち「記号としてのジャズ」と「従来の因習に囚われない音楽」という姿勢を表す言葉。『★』にはその両方がある、ということ。

この2ページにまとめられた明解さを読むだけでも、この雑誌、買って良かった。

 

デヴィッド・ボウイSF作品ガイド」渡辺英樹(編集部)

ということで、5作の解題。

スペイス・オディティ』:『2001年宇宙の旅』が下敷きになっているが、むしろブラッドベリの短編『万華鏡』の影響があるのでは。

『世界を売った男』:「Metal Gear Solid V: The Phantom Pain」や「MGS」という小島秀夫氏作のゲームに影響を与えた。

『ジギー・スターダスト』:色々な影響を与えているが、ゲームでは糸井重里「MOTHER」など。

『ダイアモンドの犬』:本作から影響されたのが、アレステア・レナルズの『ダイアモンドの犬』という中編。

『地球に落ちて来た男』:絶品と絶賛(!)。「この映画は、監督のものであると同時にボウイ自身の作品でもあると断言していいと思う。」

 

 

余談。

今日は映画『エイミー』を観て来たのだけど、その中でトニー・ベネットが「ジャズシンガー」であることを自負するエイミー・ワインハウスに、ジャズシンガーは5万人の前で歌うもんじゃない、というようなことを語り、エイミー自身も少人数のジャズクラブでのライブを最も楽しんでいたことが紹介される。

それまでロックスターを演じてきたボウイが、5万人の前でも数十人の前でもライブの出来なくなった後、自分の音楽表現に「ジャズ」を使ったことを思い出した。