bowie note

David Bowieをキーワードにあれこれたどってみるノート。

TIMES ARE CHANGING

かねてからNHK FMの「今日は一日〜三昧」と「しりすぎてるうた」にはBowieを取り上げていただいたく、リクエストメールなど送っていたのだけど、予想外なことに、先にPrinceが後者で取り上げられました。

確かにBowieの「しりすぎてるうた」って何なんだろう…という疑問はあり。

まあ、「Let's Dance」になるのかな〜〜。

 

「しりすぎてるうた」はNHK FMで不定期に放送される番組で、細馬宏通安田謙一というゆるゆる関西弁コンビが色々な角度から1曲を語り尽くすもの。これまでABBAの「ダンシング・クイーン」や渡辺美里「マイ・レボリューション」、CAROL「ファンキー・モンキー・ベイビー」が取り上げられており、どれもめちゃくちゃ面白かったので、昨日の「しりしぎてるうた:パープル・レイン」は大期待で聴き、大満足したのでした。細馬さんと言えば、「うたのしくみ」という連載でも、決して言葉と音楽を分離させることなく、「うた」としての分析を行ってくれる希有な存在。

しかも昨年、私がまだPrinceにハマる前に観た七尾旅人と細馬さんのツーマンライブで「プリンスの日本語カバー」として「Starfish and Coffee」をやってくれたこともあり、安田氏は言わずもがな、で、Princeへの造詣も深いはず、と、聞く前からワクワク。

せっかくなので忘れないようにメモしておきます。

 

まず、なぜ「Purple Rain」になったのか、という話で、やはりみんなが今年トリビュートとして演奏する曲、またニュースなどでかかる曲、NHKの特番でもラストにかかった曲だったけれど、それがもう「いかにもぴったり」であるということ。

しかしこの曲は決して「Princeらしい」曲ではないこと。

(「Princeらしい」といえばこういうの、ということで「Dirty Mind」が流れる。(コメントゲストの湯浅学氏は「Purple Rain」は「むしろボブ・ディラン的」と述べており、彼が選ぶ「Princeらしい」曲は「Eye Hate U」)

確実に「ねらい」がある曲であったこと。

ということで、これに似ている曲として紹介されたのが、こちら。

 


David Bowie Five Years

 

何が似ているかというと、「説教」ぽさ。

バーブのかけられた声で、聴衆に語りかける、というスタイルであること。

ということでまずアルバム『Purple Rain』の1曲目「Let's Go Crazy」が紹介されます。これはもうまちがいなく聖職者の語り。

「来世」はエエとこやけど、うちらはまだこの辛い「現世」で生きてかなあかんし、ほなもう踊らなあかんな、というような内容。

 

「Purple Rain」の歌詞は最初は普通にラブソングかのような始まりなのに、2回目のサビが終わり「I know, I know, I know times are changing」(ディランを彷彿とさせる言葉)というところから実はYouが恋人ではなく、観衆に代わるというのが今回の指摘。

というのはこの後「It's time  we all reach out for something new」と、「we」が出てきて、これはその後「手を挙げて振る」ことを促される観客は、その次の歌詞「That means you too」で、「え?私?」と察知。

さらに「You say you want a leader」から「And let me guide you to the purple rain」ということで、すっかりPrinceと私(たち)という関係に聴衆がおかれてしまう。

次の歌詞はもうこれ。

「If you know what I'm singing about up here

C'mon raise your hand」

はい。初めてこの曲を聴いた人も手を挙げてしまうのでした。

 


Prince Purple Rain at AMA Awards in 1985 Rare HQ

 

映画ではライブで初めて演奏されるこの曲がいきなりみんなの心を掴んでいたけれど、実際はこの曲のライブ初披露の際には、なかなか観客が乗ってきてくれなくて、Princeはしつこく14分?も演奏し続けたとか。Princeはもうこの曲は聴衆が全員手を振りながらコーラスすることが前提で作曲していた、ということ。

という彼に番組はめちゃくちゃぴったりの形容詞を授けました。

「先走り」笑。

Princeはいっっっつも何もかも先走っていて、みんなが追いつくまでにタイムラグがある、ということ、それはもう亡くなるまであらゆることがそうだった、というもの。

なるほどなああ〜〜〜。

 

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というわけで、あらためて。4月21日以来はじめて映画『Purple Rain』を見返してみました。

これまで実はあんまりこの映画、ピンと来てなかったけど、いやあ、ええじゃないか!!なにがピンときてなかったかというと、このときのPrinceの表情がいつもイマイチ理解できないというか、気持ちが読めない顔だなあと思っていたのだけど、いやあ、このラジオ聞いてから観たら急にグッときてしまった。

 

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Princeの役名はPrinceではなくKIDだけど、バンド名はThe Revolutionだし、他の登場人物はリサ、ウェンディ、モリス、アポロニアなど、映画での名前と現実の名前(芸名)が一致。 

で、映画の衣装と実際のライブでの衣装も同じだし、これはもう「現実なのか!」と思っちゃうでしょう。当時は。

こういうの、あったわ…と『すかんぴんウォーク』を思い出したけど、現実と交差する映画、体感したかった……!!

 

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関西でもいま堺の映画館で『Purple Rain』を上映してるようだけど、ちょっと遠い!

もう少し近くでお願いします……!!行くから。

 

そしてNHK FMさん。「今日は一日ボウイ三昧」(司会はサエキけんぞうで、もちろん「しりすぎてるうた」のコーナーもあり)と、「今日は一日プリンス三昧」(司会は西寺郷太安斎肇)をお願いします!!!!

 

 

 

 

SIGN 'O' THE ★s

お盆も終わり。

初盆で帰ってきてくれていた★たちを、よほど私は帰したくなかったのか、天国へ帰る魂を照らす京都の五山の送り火が大雨に見舞われたようです。珍しい。

中止にはならなかったものの、ほとんど見えなかったらしい。

 

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さて、特集紙を読み直す、ってやり始めたものの、案の定「特別号」の前で止まってしまいました。「読む」ってことだと自分用メモだからなあ…と。

まあ、ここは「ノート」なんですが。

 

 

先日の京都みなみ会館のボウイ★ナイトは結局、キャンプ参加を選らんでしまった。

見逃した『ラビリンス』は、後日、自室でプロジェクターで上映。

ちょうど帰省中の妹も誘って。

妹と私は、小学校低学年の頃、ピアノの先生に『ラビリンス』を観るために映画館へ連れていってもらったのでした。たぶん「子供が好きそう」というのと「ボウイが出てる」というので、先生が選んだのだと思う。

妹はジャレスはほとんど記憶になかったらしく、手が喋るシーンとか、悪臭の沼とか、そういうところばかり「ここ知ってる!覚えてる!」と指摘。

分かる…私もそうだった…ジャレスはあの頃の私たちには「オトナ」というか「オジサン」というか、ピンと来ないキャラで、我々は主人公サラにばかり見とれていたのでした。

 

 

今年はそういうわけでBowieとPrinceの映画を「何度も」観ている。

ほんと「映画」という形で作品を残しておいてくれてありがとう!!!!と思う。

ライブ映像とか山ほどあるのだろうけど、VHSで出て、LDになって、DVDになって、と、容れ物が変わっていったり、あるいはいかなかったりに、所有すのが大変だけど、「映画」はむしろみんなの共有物なので、出来事として体験できる。

 

先日神戸でも爆音上映を観た『Sign 'O' The Times』が今度は「良音」上映される、とのことで、塚口まで初めて行ってみた。

クリクリの茶色い目がキラキラしていて、ほんとにキレイなのに、もう、存在しないんだなあ…と思うと涙がぽろり。

でももちろんこの映画は泣いてる場合じゃなくて、どんどん観てるうちに元気になる。

このPrinceのしなやかな強さは何なんだろう…

信仰心だとすれば、それはこんなに人をむしゃらにクリエイティブに、前向きにさせてくれるものなのか。「神様を信じる強さを僕に」、なんてオザケンは書いていたけど、信じることは「楽をすること」ではなくて、強くないとできない。

 

なんか、そんなことを考えながら帰ってきたのでした。

 

初盆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Prince「ギターマガジン 7月号」「ベースマガジン 7月号」、「JAPAN JAZZ vol.71」

いやあ…

Prince特集の『現代思想臨時増刊号』が素晴らしかったので、その書評的なものを書きたくて始めたBowieとPrinceの追悼特集本の再読。なかなかたどり着かない〜〜〜

なぜこう1つのことをしたいだけなのに、マイナス地点から開始するのか…

「自分で順に全体を把握したい」性格。

絶対、塾とかで「教えられる」のは向いてなかったと想像。行ったことナイからわからんけど…

 

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はい。ようやう「表紙&特集」での最後、リットーミュージックのPrinceの方です。

 まずはこちら。

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2016年 7月号  [雑誌]

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2016年 7月号 [雑誌]

 

特集「殿下のギター愛」は堂々の26ページ!!!

 

ちなみに前回(2010年9月号)の特集はこちらで読めるようになっています。

rittor-music.jp

 

 

「巻頭言」西寺郷太

あらゆる楽器を操るものの、「ギター・ヒーローとしての佇まいの、ステージさばきが極めて美しかった」ため、プリンスといえばギター。

 

「#1: HOHNER HG-490 "Mad Cat"」

Princeが最も愛したとして知られる、日本のブランド、H.S.アンダーソン(1974年設立)のギター。

設計/開発者の椎野秀聰のインタビュー。最初は「あんな気持ち悪いヤツが使っても誰も買わないだろう、と思って」いたそう。

 

「#2: Cloud Guitar」

映画『パープルレイン』の中に出てくるギター。

 

「#3: Symbol Guitar」

'94年の改名の前年に制作して使い出した。

制作、リペアを担当した柚山哲也のインタビュー。

 

「#4: GUS GUITARS G1"Purple Special"」

制作者のサイモン・ファーマーのインタビュー。Prince最後のギター。

 

「プリンスが愛したギターたち」川上啓之

メイン使用以外のギターを紹介。およびアンプ、エフェクターも。

 

「Prince's Sound Style〜プリンスの録音環境を斬る!!」中村公輔

ペイズリーパークスタジオの機材紹介。

デヴィッド・Zの役割。APIのミキサー卓、リンドラム、リズムマシン、デジタル・リバーブ、ライン録音。

 

SUGIZOインタビュー」

ギター的名盤は『Rainbow Children』『N.E.W.S.』『Parade』

 

「Playing Analysis of Prince』安東滋

カッティング、バッキング、コンビ、コード・ボイシング、ソロ…

 

この特集号はほんと超保存版!!!

 

 

次に

 

BASS MAGAZINE (ベース マガジン) 2016年 7月号 [雑誌]

BASS MAGAZINE (ベース マガジン) 2016年 7月号 [雑誌]

 

 

特集は12ページ。

「"ベースは僕にとっては「B-A-S-E」であって「BASS」じゃない。「BASS」は魚さ(本誌2000年2月号より)”」と語ったPrinceの低音を探る。

 

「時代を作った"天才"の歩み」佐藤英輔

バイオグラフィーと、「常軌を逸した音楽的な幅の広さ」「希有のボーカリスト」「常軌を逸した多作家であり、音楽の虫」「感性の鋭さやクレヴァーさから来る、イメージ作りのうまさ」「バカヤロー精神、あまのじゃく志向に則った、胸のすく行動」「女好き」といトピックを経て、プリンスとベースについて。「ベースを意識的に入れていない曲」は「低音についての独自の感覚、見解を持っていたことの証左」。ラリー・グラハムへの信奉。

 

「ベーシストに聴いてほしいプリンス」國崎晋

『戦慄の貴公子』:シンセベースのぶっきらぼうなまでの野蛮かつ斬新さ

『パープルレイン』:「弦ベース」や「シンベ」はないが、「キックベース」は存在。リズムマシンによって作り上げられた低域の音階は存在。「ロック/ポップスでベースに求められているのは、低い音域と高い音圧そして反復だということが、ベースという楽器を使わずして証明されてしまっている。」

『パレード』:「KISS」はベースはないが、「シンセのシーケンスがベース弦の倍音成分のような役割を果たし、実際には存在しないベース・ラインが多くのリスナーには聴こえているはずだ」。

『サイン・オブ・ザ・タイムズ』:シンベ、弦ベースとバラエティ豊か

『Rave Un2 the Year 2000』(DVD):ラリーのプレイを。

『レインボウ・チルドレン』:〃

 

スペシャルインタビュー:ロンダ・スミス」

NPGのベーシスト。身近で体感してきたPrinceのベースプレイ。典型的なジャズ・ベースサウンドがPrinceの好み。

「インタビュー:日向秀和

独自のノリと変なタイミングの面白さ。

 

「Playing Analysis of PRINCE」前田"JIMMY"久史

「ソー・ブルー」「アイム・ユアーズ」「セクシー・ダンサー」「アイ・フィール・フォー・ユー」「ヘッド」「パーティーアップ」「レッツ・ワーク」「レディ・キャブ・ドライヴァー」「アルファベット・ストリート」「2・ニグス・ユナイテッド・4・ウェスト・コンプトン」「Cloreen Bacon Skin」「Last Heart」「ベイビー・ノウズ」「ミュージコロジー」「タイム」

 

この特集号も鋭く、深く面白かった。

Drums Magazineでは特に特集はなかったようだけど、もしあったなら欲しかった。

楽器から見て行くPrinceは、もっとも全うなアプローチなんだろう。

 

ついでに!

 

JAZZ JAPAN(ジャズジャパン) Vol.71

JAZZ JAPAN(ジャズジャパン) Vol.71

 

 

4ページのみながら、「帝王(マイルス)と殿下(プリンス)の"if"」上原基章

マイルスとプリンスが「合わせ鏡」「カインとアベル」的な存在であること。

共演した音源と、実現しなかった共演について。

 

 

ここまで!

次からは特別特集号。

早いこと現代思想へ!!!

 

 

BOWIE「Guitar Magazine 3月号」、「Rhythm & Drums Magazine 4月号」

今日はリットーミュージック

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表紙になったのはGuitarのPrinceのみですが、それぞれ特集が。

 

まずこちら。 

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2016年 3月号 [雑誌]

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2016年 3月号 [雑誌]

 

 

Bowie特集は6ページ+「Stay」の楽譜8ページ。

「追悼 デヴィッド・ボウイ山口智

知らなかったエピソードが「日本語訳」で幾つか。

「あいつがイグアナちゃん(イギー)なら俺はアリゲーター

ドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』の中でフリークショーの女主人が夜な夜な歌う「火星の生活」

『ダイアモンドの犬』でのボウイのギターのアグレッシブさ

 

TAKUYA 取材・撮影:田坂圭

ソングライターとしてコード進行も見事。日本のポップスとは方法論がまったく違う。

 

志磨遼平(ドレスコーズ)×越川和磨(THE STARBEMS)

"アートワークから何から全部、自分が死ぬことで完成するアルバム"

 

 

続いてドラムマガジン。表紙&特集はマーク・ジュリアナ。

Rhythm & Drums magazine (リズム アンド ドラムマガジン) 2016年 4月号 [雑誌]

Rhythm & Drums magazine (リズム アンド ドラムマガジン) 2016年 4月号 [雑誌]

 

 

ボウイ特集は8ページ。

「HISTORY〜デヴィッド・ボウイを支えたドラマーたちの変遷」Shinichi Takeuchi

1960〜1970年代:ミック・ウッドマンジー、エインズレー・ダンバー、トニー・ニューマン、アンディー・ニューマーク、デニス・デイヴィ

1980年代:トニー・トンプソン、オマー・ハキム、ハント・セールス

1990〜2010年代:プージー・ベル、ジョーイ・バロン、スターリング・キャンベル、ザッカリー・アルフォード、マーク・ジュリアナ

…デニス以降、ほとんどが黒人ドラマー。

 

「Interview 1: Mick Woodmansey」(2001年3月号から抜粋)

「曲に合うように叩くことは簡単だ。でも、前に聴いたことがあるような演奏をしたくない。」

 

Interview 2: Omar Hakim

「スタジオに入ったらみんなその場で曲を頭に入れて、全部耳で聴いて、一番グルーヴしてカッコいいものが見つかるまで、みんなでひたすらジャムったんだ!」

 

Interview 3: Zachary Alford」(2013年7月号から抜粋)

「デモと違うビートを叩いてたんだ。そしたらデヴィッドが"それ、いいね!”って。(…)いろんなことを試して、気に入ると"OK、これをやってみよう!"って。

 

Interview 4: Sterling Campbell

「新しいものに対応する方法を見つけた気がする」

 

「PLAYING ANALYSIS〜デヴィッド・ボウイのリズム/ドラム・トラックをひも解く〜」Hiroshi Matsuo

「Life On Mars?」「Five Years」「Let's Dance」「I Keep Forgettin’」「Dirty Boys」「Where Are We Now?」「Jamp They Say」「New Killer Star」

 

「Drummer's File〜ボウイと共演した打楽器奏者たち」

 

 

というわけでやっぱりPrinceの方は後日。

 

先日、Neu!やHarmoniaのMichael Rotherのライブへ行き、ドラムはHans Lampeだったのだけど、ギターもドラムもクールに熱くて最高!!と思って楽しんだところなので、あまり語られないボウイの音楽の「演奏」に注目するこれらの楽器雑誌の特集は他の一般的な雑誌よりも実はすごく面白い。

 

Prince「ミュージックマガジン 6月号」

今朝(日本の)、BBCラジオでBowieのPromコンサートを生放送していました。

たぶんまたそのうちアーカイヴが聞けるようになるかと。

www.bbc.co.uk

 

昨日読み返したレココレのサエキさんの記事の中で強調されていたBowieのソングライティングの面白さが、こういう色んな人がBowieの曲を演奏する場では特に楽しめる。

John Caleの「Valentine's Day」とか、とても良かった。

 

 

というわけで、昨日、ほんとは一緒に書こうとしていたMusic Magazineの方、行きます。

 

 

Princeの訃報が日本に伝わったのが4/22なので、急遽特集を変更して 28日後に発売。

Prince特集は47ページ。

 

「緊急追悼対談 安齋肇×湯浅学 プリンスに較べられる人はプリンスしかいない」

プリンスへの大ツッコミ大会。笑

特集アタマがコレかい!!と、これ最初に読んだ時も、今も、やっぱりプリンスが死ぬなんて全然ピンとこないので、笑いまくって読んだのでした。

そして大事な指摘がたくさん。「曲のアタマがパシッ」と入って、「フェードアウトが少ない」から、曲を繋ぎやすい。すぐ何の曲か分かる。「本人も間違えないように出来てる」って、めっちゃ核心。

 

「人種もジャンルも越えて深く愛されていたことがよく分かる、哀悼の声の数々〜急死前後のアメリカでの報道と、各界の人々の反応」堂本かおる

4月7日からの動向。

アメリカでも様々な人々が悼む中、比較的すくなかったのが、若いラッパー、10〜20代の黒人、というのがPrinceと縁の薄かった層と推測。

 

「プリンス・ヒストリー① 謎めいた天才の衝撃〜ロックとファンクの狭間からの挑発、そして成功」小出斉

『Chaos and 〜』まで。

 

「オリジナル・アルバム・ガイド①」安斎明定、大谷隆之、高橋健太郎、二木信、安田謙一和久井光司、渡辺健吾、渡辺亨

『For You』(1978)〜『Crystal Ball』(1998)

 

「プリンス・ヒストリー② 果敢で濃密な時間〜過剰なカリスマ性をゆっくりと脱ぎ捨てて」出田圭

『Rave〜』以降。

 

「オリジナル・アルバム・ガイド②」出田圭、印南敦史、長谷川町蔵、松竹剛、宮子和眞

『Rave Un2 The Joy Fantastic』(1999)〜『HITnRUN Phase Two』(2015)

 

「編集盤、別名義など、そのほかのアルバム」高橋修

 

「80年代、映画という新世界で殿下は奮闘し続けた〜プリンスが制作した4本の映画作品」大森さわこ

 

「プリンスが手がけ、見出し、楽曲提供したアーティスト」安斎明定

 

「プリンスがその後に与えた多大な影響〜密室打ち込みファンクから自由な性表現まで時代、ジャンルを超えて存在するプリンス・チルドレン」長谷川町蔵

「日本に我らが岡村靖幸がいるように、それぞれの国に〈ドメスティック化されたプリンス〉がいるはずだ」けれど、アメリカの黒人限定で紹介。

テレンス・トレント・ダービー、ミゲル、ディアンジェロアウトキャスト

 

 

以上が特集。

以下は連載。

「ALBUM PICKUP」

『ヒット・アンド・ラン・フェーズ・ツー』宮子和眞

プリンスが肩の力を抜いて投げるボールのキレの良さ=歌謡性。

 

「編集後記」高橋修

Princeといえば「今野雄二さんと、中村とうよう」と結びついたイメージ。

「4月28日に見た岡村幸公演で、彼がアンコールで「スノウ・イン・エイプリル」を弾き語りで歌ったのには泣けました。」

 

 

BOWIE「レコードコレクターズ 3月号」、「ミュージックマガジン 3月号」

今日はミュージックマガジン社が出している2つの看板雑誌それぞれが表紙&特集でとりあげたBowieとPrince。

もともと「レコードコレクターズ」は「ミュージックマガジン」の別冊として出たので、棲み分けがはっきりしているようで、80年代からBowieはレココレ、PrinceはMMで、という感じだったかと。

追悼号もしかり。

 

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まずはレコード・コレクターズ3月号 (2016年2月15日)

 

訃報が日本に伝わったのが1月11日なので、それから36日後に発売。

表紙が凝ってて、★が隠れてます。

75ページの大特集!

 

「最後の伝説の扉を自らの手でみごとに閉じた、"地球に落ちて来た男"」大鷹俊一

「ロック界が初めて出会う、自己の死と対峙し、作品化したアーティスト」として、ボウイの死という「ニュース」の経緯、およびボウイ史概論。

 

「デイヴィッド・ボウイ"私の一枚"」

赤尾美香『LET'S DANCE』:18歳で36歳のボウイに恋をしていた。

ECD『CHANGESONEBOWIE』:77年2月の「地球に落ちて来た男」公開がファンになって以来最初の最大のイベント。

市川紗椰『hours...』:ジギーではまった小6時に初めて聞いた時は嫌いだった。

奥田英朗『ALADDIN SANE』:ロック・レジェンドらしくドラッグでも飛行機事故でも自殺でもなく、ガンという普通の死に方だったいう衝撃。

岸野雄一『YOUNG AMERICANS』:黒人音楽への冷徹な対象化とぬぐいされない愛着

志摩遼平『ZIGGY STARDUST』:このボウイの"やりくち"に心酔し、なぞってきた。

高橋靖子『HEROES:革ジャンエピソード

土屋昌巳ZIGGY STARDUST』:リアルタイムのあのとてつもない衝撃

ピーター・バラカン戦場のメリークリスマス:声が好みじゃない。映画のロケの思い出。

湯浅学『hours...』世阿弥の「離見の見」。浮遊感。

ROLLYDAVID BOWIE(SPACE ODDITY)』有近真澄氏の見事な日本語詩。

 

「『変身』と表裏一体をなすリアルな音楽的衝動」サエキけんぞう

この特集全体でもっとも面白かった記事。サエキさんの文体が冴え冴え。NHK FMで「今日は一日ボウイ三昧」が行われる際の司会はサエキさんでお願いします!

「『演じる』ことで始めたくせに、生命のすべてを映すことになった楽曲群」から10曲を再検証。

スペイス・オディティ:圧倒的なこの曲の個性は、マイナーとメジャーの混在により、「宇宙の暗く孤独な側面と、宇宙船に太陽が当たったような展望の瞬間を混在させていること」。

〈チェンジズ〉:華のあるメロディの魅力は生涯随一。

〈5年間〉:ジギーというアルバムの評価はこの曲野リズム構造のオリジナリティのせい。

〈ジーン・ジニー〉:グラムのギラギラさ。

〈ヤング・アメリカンズ〉:ボウイの歌唱という異能が結晶している。

ワルシャワの幻想〉:実験結果が失敗したらリリースしないという約束だったほどの実験作。

〈ヒーローズ〉:「ドロっとした狂気」と「骨太な黒人R&B的3リズム」、イーノ&フリップの混ざった破壊力。

〈レッツ・ダンス〉:「ここ一番のメロディ・センス」。

〈ハーツ・フィルシー・レッスン〉:「シーンと格闘する硬質な意志」。

〈★〉:全文素晴らしいです。(涙)

 

再掲インタビュー「ジギー・スターダストはロスにウッチャッてきたよ」インタヴュ—ワー:坂本龍一(1979年2月号)

なんと戦メリ以前のインタビュー!!貴重。

 

「デイヴィッド・ボウイ・ヒストリー」赤岩和美

 

「京都を愛した親日家としての素顔」岡田敏一

正伝寺を尋ね、CM撮影の経緯を紹介。

 

David Bowie 1970s Memories」写真:鋤田正義

 

「遺作という意味を越え、吹っ切れた鮮やかさが残る意欲作」安田謙一

初めて全米1位を獲得したアルバム『★』の全曲解説。

 

『★』のLP+リトグラフ

 

「デイヴィッド・ボウイ・ディスコグラフィ〜オリジナル・アルバム」小野島大

 

「日本盤7インチ・シングル・ギャラリー」常磐響

 

「デイヴィッド・ボウイ・ディスコグラフィ〜映像作品」吉村栄一

 

以上、盛りだくさんの特集。

 

同日発売の「ミュージックマガジン」も特集が読みたくて買っていたので、Bowie追悼記事も付いてきました。3月号(2月20日発売)。 

 

4ページの追悼記事。

「追悼デヴィッド・ボウイ」志田歩

(いま気付いたけど、レココレは「デイヴィッド」で、MMは「デヴィッド」表記なんだ)

『★』の見事さ、発売日に発表された写真の明るいスター性、「実は…」を知った時に誰もが容易に感じとれた彼の闘いの過酷さと雄々しさ。

 

「特集●新世代ジャズ・ドラマー」

『★』が如何に「新しい」音楽だったかを立証するためにも、この特集がこのタイミングで出た意味は大きかった。

 

 

というわけで、ホントはMMのプリンスも書こうとしてたのですが、予想以上にレココレのボウイ特集がボリュームあって、無理です!

また次回。

 

それにしても半年経って、だいぶあれかな、と思って始めたこの「追悼特集メモ」ですが、どうにもこうにもBowieのことに関しては今もすぐ涙が出てしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

BOWIE 「SFマガジン 4月号」

B vs P ということで、一応、同じ出版社の出版物で比較しようとしているのですが、今回は比較できない系。

疎い私には意外だった雑誌で表紙&特集を組まれたBOWIE。

 

SFマガジン4月号。 

SFマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]

SFマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]

 

 ボウイ特集は計24ページ。

SFにはまっっったく明るくない私ですが、先日「生ジギーライブ」を観たことがあるというロングランファンの方に、Bowieを知ったきっかけをうかがってみたところ、高校生の頃、SFファンだった友人から「金星人にそっくりの人がいる!」と教えられ「ホントだ!!!」と興奮した、というエピソードを聞いたので、「なるほど」とやっと思いました。そしてこの特集が、存外良かったです。

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「巻頭言」丸屋九兵衛

すいません、存じ上げず、すっかりSF界の方かと思っていたら、bmrの方でした!!

なるほど!!!SFファンへの細かな目配せの効いたボウイ概論。

 

「シン・ホワイト・デューク やせっぽちの青白き公爵の帰還」ニール・ゲイマン小川隆

メイン記事はこの短編の翻訳。ゲイマン氏というのはアメコミ界のスター原作者(イギリス人)らしいです。へ〜〜。

そういや「シン・ホワイト・デューク」って何者?って考えたことなかった…と反省。

 

「仄暗い宇宙のロックスター」難波弘之

音楽家でありSF作家だそうです。すいません、疎くて…。

「『ジギー・スターダスト』を初めて聞いた学生の頃、僕はサイケやプログレを聴いていたのだが、まるで宇宙人の音楽のような、斬新で不思議なボウイの曲やサウンドを聴いて、正直、〈ああ、これで僕の聴いている音楽は古くなるんだろうな〉と思った。」とあるのだけれど、これがすごく意外な感想で新鮮。もちろん21世紀になって初めて聞いた私の耳にも新鮮だと感じたのだけど、耳障りは確実に「古い音」だったので。

 

「永劫の旅人ジギー」巽 孝之

BowieとSFとの相互関係。そしてイエスのリック・ウェイクマンが「Space Oddity」でメロトロンで参加しているという話。(彼は追悼で「Life On Mars?」をBBCラジオで披露。)


Rick Wakeman's Tribute To David Bowie - Life On Mars

 

「新たなる音楽遺伝子の誕生 ー『★』解題」吉田隆一

渋さ知らズなどにも参加していた(る?)サックス奏者の吉田氏。これは短くも的確な『★』評!!

「かつてボリス・ヴィアンは友人に〈SFはすごいぞ!今や月にどのようにして行くかではなく、行って何をするかが問題なんだ!〉と語ったと伝えられますが、『★』はまさしく〈ジャズミュージシャンを使うことではなく、彼らを使って何をするか〉という課題に向き合った音楽」と定義し、「ジャズ」という語が2つの意味で使用されている現状を解説。すなわち「記号としてのジャズ」と「従来の因習に囚われない音楽」という姿勢を表す言葉。『★』にはその両方がある、ということ。

この2ページにまとめられた明解さを読むだけでも、この雑誌、買って良かった。

 

デヴィッド・ボウイSF作品ガイド」渡辺英樹(編集部)

ということで、5作の解題。

スペイス・オディティ』:『2001年宇宙の旅』が下敷きになっているが、むしろブラッドベリの短編『万華鏡』の影響があるのでは。

『世界を売った男』:「Metal Gear Solid V: The Phantom Pain」や「MGS」という小島秀夫氏作のゲームに影響を与えた。

『ジギー・スターダスト』:色々な影響を与えているが、ゲームでは糸井重里「MOTHER」など。

『ダイアモンドの犬』:本作から影響されたのが、アレステア・レナルズの『ダイアモンドの犬』という中編。

『地球に落ちて来た男』:絶品と絶賛(!)。「この映画は、監督のものであると同時にボウイ自身の作品でもあると断言していいと思う。」

 

 

余談。

今日は映画『エイミー』を観て来たのだけど、その中でトニー・ベネットが「ジャズシンガー」であることを自負するエイミー・ワインハウスに、ジャズシンガーは5万人の前で歌うもんじゃない、というようなことを語り、エイミー自身も少人数のジャズクラブでのライブを最も楽しんでいたことが紹介される。

それまでロックスターを演じてきたボウイが、5万人の前でも数十人の前でもライブの出来なくなった後、自分の音楽表現に「ジャズ」を使ったことを思い出した。